営業やカスタマーサクセス、経営企画やRevOpsに関わっていると、
・「予算は立てたけど、実際どこまで達成できそうなのか自信がない」
・「営業、マーケティング、カスタマーサクセスで数字や見ている指標がバラバラ」
・「どこで機会損失しているのか、感覚ではわかるけど証拠データがない」
こんなモヤモヤを感じる場面が多いのではないでしょうか。
そうした課題に対して、収益データをAIで一気通貫に“見える化”し、組織としての意思決定の質を底上げする考え方が「レベニューインテリジェンス(Revenue Intelligence)」です。
本記事では、レベニューインテリジェンスの基本概念から、具体的な効果、ツール選定のポイントまでを一気に整理します。
レベニューインテリジェンスとは何か?
単純なAIアシスタント 対 AIエージェント:
レベニューインテリジェンスとは、AIを活用して、収益ライフサイクル全体のデータを一元的に収集・分析し、実行可能なインサイトへ変換する仕組み/考え方です。
- 対象となるデータ
- 営業活動(商談、案件進捗、パイプライン)
- マーケティング(キャンペーン、リードの質と動き)
- カスタマーサクセス/サポート(利用状況、問い合わせ、解約兆候)
- プロダクトの利用データ など
- そこから導き出されるインサイト
- 市場トレンド
- 収益予測(フォーキャスト)
- 成長機会(どのセグメント・どの商品が伸びるか)
- 顧客エンゲージメントや解約リスク
つまり、「売上」という結果だけでなく、その前後にあるすべての要素(行動・プロセス・顧客体験)を、AIで分析し、意思決定に活かすイメージです。
2025年時点では、すでに約78%の企業が、営業・収益領域でAIツールを活用していると言われています。また、レベニューインテリジェンスを取り入れた組織のうち、約7割が5%以上の増収を経験しているというデータも出ています。
レベニューインテリジェンス と レベニューオペレーションズ(RevOps) の関係
近年注目されている レベニューオペレーションズ(RevOps) は、
- 営業・マーケティング・カスタマーサクセス・ファイナンスなど、収益に関わる部門を横断的に連携させる
- データを共通基盤に集約し、「One Revenue Team」として運営する
といった考え方・運営モデルです。
この RevOps が“土台”になっているからこそ、レベニューインテリジェンスが機能する と言えます。
- RevOps が担うこと
- 組織構造の見直し(部門横断の連携)
- プロセス標準化(案件定義・ステージ・指標の統一)
- システム統合基盤の整備(CRMやMA、CSツールなど)
- レベニューインテリジェンスが担うこと
- 集約されたデータのAI分析
- 予測モデルやリスク検知
- 営業・カスタマーサクセスなど現場が動きやすい「具体的アクション」への落とし込み
Forrester では、RevOps とレベニューインテリジェンスを統合的に捉えた「RO&I(Revenue Operations & Intelligence)」 というカテゴリーも紹介しています。これは、バイヤージャーニー全体のデータを分析し、あらゆるステージの収益活動を最適化するというコンセプトです。
レベニューインテリジェンスが解決する「4つの収益最大化の壁」
企業が「収益を最大化したい」と考えたとき、多くの場合、次の4つの壁にぶつかります。
- データがバラバラで、部門間が噛み合わない
- 予測が当たらない(市場変化に弱い)
- 機会損失と“収益漏れ”が見えない
- 営業プロセスや育成が属人的で、生産性が頭打ち
レベニューインテリジェンスは、これらをまとめて解消することを狙った仕組みです。
1. 分断されたデータ、分断されたチーム
ありがちな状況として:
- カスタマーサポート:顧客とのやり取りや不満を把握
- 営業:案件情報や日々のアクションを管理
- マーケティング:キャンペーンやリード情報を追跡
しかし、それぞれが別システム・別スプレッドシート・別ルールで管理されているため、顧客との一連のジャーニーがつながって見えず、部門ごとに目標がバラバラで、KPIも噛み合わないといった“サイロ化”が起きがちです。
レベニューインテリジェンスプラットフォームは、CRMを中心にこれらのデータを統合し、1つのビューに集約します。
- 全員が同じ数字・同じ顧客情報にアクセスできる
- 経営層も含め、「共通の現状認識」を持てる
- 収益最大化という“会社全体のゴール”で議論しやすくなる
といった状態を作れます。
2. 変化の激しい市場で、予測が当たらない
従来のフォーキャストは、営業担当者の主観/感覚、手作業でのデータ入力過去の実績に単純な係数をかけるといった方法に依存しがちでした。
その結果、
- 予測数字と実績が大きく乖離する
- 市場変化(景気・競合・価格変動)への追随が遅れる
- 投資判断や採用計画が後手に回る
といったリスクを抱えます。
レベニューインテリジェンスでは、AIによる予測分析(Predictive Analytics)を使い、
- 過去データとリアルタイムデータ
- バイヤーの行動(Web行動、メール反応、商談頻度)
- 案件の進捗パターン
- 営業アクティビティの内容・質
などを組み合わせて、より精度の高い動的なフォーキャストを実現します。
3. 機会損失・収益漏れの可視化
次のような「もったいない」は、どの組織にも存在します。
- クロスセル/アップセルの余地があるのに、打ち手が出ていない
- 価格の出し方にばらつきがあり、粗利を削っている
- 解約予兆があっても、誰も気づかずに手を打てていない
レベニューインテリジェンスは、購買シグナル、顧客の興味関心(どの製品・どの機能を見ているか)、商談リスク(停滞期間、キーマン不在、競合動向)などを自動で検知し、「今アクションすべき案件/顧客」を浮かび上がらせます。それに加え、具体的な推奨アクションまで提示できるプラットフォームも増えてきています。
4. 営業プロセス・コーチングの非効率と生産性低下
現場の営業チームでは、以下のような状況が売上の頭打ちを招きがちです。
- CRM入力やレポート作成などの事務作業に時間を取られる
- プロセスやルールが標準化されておらず、属人的な進め方になりがち
- マネージャーは「誰が何でつまずいているのか」を把握しきれない
レベニューインテリジェンスプラットフォームは、メール・通話・オンライン会議などからデータを自動取得し、営業活動や顧客との会話を会話インテリジェンスとして記録・分析することによって、各営業担当者のコンバージョン率、商談期間、受注単価、通話や会議の記録などを見える化し、「誰に・どんなコーチングが必要か」を明確にします。
その結果、
- マネージャーの育成が “感覚” ではなく “データ” ベースになる
- 営業担当者も、自分の課題を客観的に把握できる
- チーム全体としてプロセスが標準化され、生産性が向上する
といった効果が期待できます。
レベニューインテリジェンス導入で得られる主なビジネスメリット
1. 予測可能な収益(Predictable Revenue)
RevOps は、前年比成長を促進するために必要なフレームワークを構築し、予測可能な収益構造を実現します。 レベニューインテリジェンスはそこからさらに一歩踏み込み、
- 内部データ(案件・顧客・活動)
- 外部要因(市場・景気・競合)
といったあらゆる要素を加味し、複数のシナリオに基づいた予測モデル(予測モデリング)で、より精緻に将来の収益を予測し、財務部門に提供します。
2. 全体可視化とサイロの解消(Total Visibility, Zero Silos)
レベニューインテリジェンスは、収益ライフサイクル全体の「エンド・ツー・エンドの可視化」を目指します。CRM や各種ツールから、顧客とのインタラクション情報を自動的にキャプチャし、し統合ビューに一元化することで、一貫した収益予測とレポーティングのための「Single Source of Truth(単一の真実)」が確立されます。
それにより、経営層、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど、社内のあらゆるチームが同じ状況と認識を共有することが可能です。
3. 適応力の高い予測と、より鋭い意思決定
ここ数年のような不確実な環境では、「固定的な予測」はすぐに陳腐化します。
レベニューインテリジェンスは、AIを活用しながら、複数シナリオ(ベースライン/強気/弱気)
や変数分析(価格、人数、コンバージョン率、リード数など)を考慮し、リアルタイムに近い形で予測をアップデートします。
その結果、
- 「今のペースだと、3ヶ月後にどの程度のギャップが出るか」
- 「どのレバー(人員増、価格見直し、施策投下)を引くべきか」
など、企業にとって最も収益性の高い判断を、“感覚”ではなく“データに基づく仮説”として行えるようになります。
4. 営業サイクルの短縮と機会拡大
レベニューインテリジェンスによって、
- ターゲットの絞り込み(どのセグメント・どのペルソナが確率高いか)
- 顧客の購買シグナルの検知
- リスク案件の早期発見
が自動化されることで、営業サイクルの短縮と案件の取りこぼし削減につながります。
さらに、データ分析の多くが自動化されることで、レポート作成や集計作業に追われることもなく、正確性も高まり、「顧客との対話」に集中することができます。
レベニューインテリジェンスプラットフォームの選び方
では、実際にレベニューインテリジェンスを導入する際、どのような点を重視すべきでしょうか。
1. AI活用の観点から見る「必須機能」
- CRM との高い連携性
- 既存のCRMやSFA(Salesforce など)とどの程度シームレスに連携できるか
- 他のツール(MA、CSツール、通話・Web会議プラットフォームなど)との統合性
- 分析できるインサイトの種類
- パイプライン分析
- 収益予測(フォーキャスト)
- 営業パフォーマンス/活動の可視化
- 自動更新とリアルタイム性
- データ更新の自動化(手入力依存からの脱却)
- ほぼリアルタイムに近いインサイト提供が可能か
- 予測分析(Predictive Analytics)
- メール、通話ログ、CRMデータなどを横断して分析できるか
- 売上・市場トレンド・顧客行動・収益成長ポテンシャルを予測できるか
- 言語データ処理(会話インテリジェンス)
- 音声・会話の記録・文字起こし機能
- NLP(自然言語処理)による感情・意図の分析
- 「どんなトークが成約につながりやすいか」のパターン分析
- 現場を動かすガイド機能
- 営業やマネージャー向けのパーソナライズドダッシュボード
- アラート通知(リスク案件・チャンス案件の自動検知)
- カスタマイズ可能なレポート機能
単に「ダッシュボードが見やすい」だけではなく、“誰が・何をすればいいか”までガイドしてくれるかがポイントです。
2. エンタープライズでの利用を見据えたポイント
とくに中堅〜大企業で導入を検討する場合、次の観点も重要です。
- コンプライアンス対応
- ログの保持・アクセス権限管理
- データ保護/プライバシー対応
- ワークフロー自動化
- 承認プロセスや通知など、既存の業務フローとの連携
- ルールベース+AIのハイブリッドで運用できるか
- 運用・トレーニングのしやすさ
- 導入後のオンボーディングプログラム
- 継続的なトレーニングコンテンツやサポート
- 社内で“使いこなす人”を増やすための仕組み
レベニューインテリジェンスは、ツールを入れて終わりではなく、「使い続けて学習させる」ことで価値が高まるタイプのソリューションです。
導入後も継続的に活用・学習していけるよう、運用しやすい製品かどうかも見極めが必要です。
まとめ:レベニューインテリジェンスで「収益の見える化」と「打ち手の精度」を両立する
ここまで見てきたように、レベニューインテリジェンスは、「収益に関わるあらゆるデータを統合・分析し予測と意思決定の精度を高め、営業・マーケティング・カスタマーサクセス・経営が「同じ絵」を見ながら動かすための考え方・仕組みです。
すでに RevOps 的な発想で組織横断の仕組みづくりを進めている企業にとって、レベニューインテリジェンスは、次のレベルの“データドリブン経営”へのステップアップと言えます。
次の一歩:自社に合ったレベニューインテリジェンスを検討する
- 「まずは、うちのデータがどこまでつながるのか知りたい」
- 「既存のCRMやインセンティブ設計とどう連携できるのか相談したい」
- 「日本の営業組織の実情に合った導入ステップを知りたい」
と感じられた方は、ぜひ一度 Xactly にご相談ください。
Xactly のソフトウェアソリューションは、既存システムとの自然な連携を前提に、レベニュー戦略の高度化を支援します。
自社の収益ポテンシャルを最大限引き出すレベニューインテリジェンス戦略について、具体的なイメージづくりからお手伝いさせていただきます。