インセンティブとは
インセンティブ(incentive)とは、「刺激」「動機」などの意味を持つ英単語です。混同されやすい言葉にモチベーションがありますが、モチベーションは個人の内面から生じる行動意欲・動機である一方、インセンティブは外部からの刺激・動機・誘因という違いがあります。ビジネスシーンにおけるインセンティブは主に報酬金の意味を持ち、社員のモチベーションアップとそれによる生産性向上を目的とした制度のことを指します。
歩合制・ボーナスとの違い
歩合制という報酬制度もありますが、インセンティブ報酬と同様に、個人の成果の度合いに応じた報酬を指します。企業によって表現上の違いはありますが、意味としてはインセンティブ報酬と歩合制に違いはありません。
一方、ボーナスも同じく毎月支払われる給与にプラスして支払われる報酬になりますが、通常、ある目標が達成された際に支給される一定の報酬になります。企業全体の業績目標達成を基準に支払われることも多いと思います。個人の成果の度合いに応じたインセンティブ報酬とは種類が異なります。
インセンティブの種類
インセンティブというと主には成績に応じた金銭的な報酬を意図しているケースが多いと思います。ただ、金銭的な報酬に限らずさまざまなインセンティブの種類があります。ここでは5つのインセンティブの種類と目的を解説します。
評価的インセンティブ
評価的インセンティブとは、人の尊厳欲求を刺激するインセンティブです。人事評価や表彰制度などを設け、「自分は評価されている」と感じさせることで、従業員のモチベーションアップにつなげます。
人的インセンティブ
人的インセンティブとは、人間関係による行動の促進やモチベーションの向上・維持を目的としたインセンティブです。尊敬する上司や競い合える同僚、和やかな雰囲気など、従業員に合わせた人間関係を整える必要があります。どのような人間関係を求めるかは従業員ごとに異なるため、柔軟に異動や相談ができる環境を整えることが重要になります。
自己実現的インセンティブ
自己実現的インセンティブとは、仕事を通じて自らの成長を実感し目標達成へとつながるような環境を整えるインセンティブです。従業員が成長感や達成感を得られるようになると、次の仕事に対するモチベーションが上がり、さらなる成長につながる良いループを生み出します。
理念的インセンティブ
理念的インセンティブとは、企業や経営者が掲げる理念や価値観に共感し、従業員の目標達成意欲を動機付けするインセンティブです。理念的インセンティブで動機付けされた従業員は企業や経営者と同じ方向性を持って業務をおこなうようになるため、強力なインセンティブになります。
金銭的インセンティブ/物理的インセンティブ
金銭的インセンティブ/物理的インセンティブとは、成果に応じて、金銭を含む物理的な報酬を与えるインセンティブです。多くの人がイメージしているインセンティブは、この金銭的インセンティブ/物理的インセンティブに該当します。
金銭的インセンティブの種類
金銭的インセンティブのなかにも、何を成果の対象とするかによっていくつかの報酬の種類があります。ここでは4つの金銭的インセンティブの報酬の種類を解説します。
売上に基づいた変動報酬
営業担当者の売上に応じて支払われる変動インセンティブ報酬で、最もよく利用されている方法です。契約につきその売上の何%かを支払う場合、四半期ごとの売上の合計から決まった割合を支払う場合、四半期ごとの売上目標の達成割合に応じて支払う場合などがあります。
指定製品の販売による報酬
指定のサービスや製品を売り上げたときにプラスアルファで導入されるインセンティブ報酬です。短期的な効果を得たい際に効果的に働きます。例えば、新製品のリリースのタイミングや、売り上げを拡大したい製品がある場合に有効な方法です。 SPIF(スピフ:Sales Performance Incentive Fundの略)とも呼ばれたりします。
ボーナス
ある目標が達成された場合に、一定額(または達成度に応じた額)が支払われる報酬のことです。多くの場合、企業の業績を基準に支給されます。売上や指定の製品の販売によるインセンティブが営業職メインであるのに対し、ボーナスは幅広い職種で導入できます。
個人目標達成による報酬(MBO)
報酬としてはボーナスのようになりますが、マネージャーと相談して設定した個人目標に対する達成に対して支払われる報酬です。MBO(Management by Objectesの略)とも言われ、目標による管理制度とそれに付随する報酬のことを指します。こちらも幅広い職種で導入できます。
インセンティブ報酬制度のメリット
インセンティブ制度を取り入れるとさまざまなメリットが得られます。主なメリットを3つご紹介します。
モチベーション・エンゲージメントを向上させる
インセンティブ報酬制度を取り入れると、自身の業務成果の度合いに連動して、評価や報酬が得られるようになります。評価や報酬が得られることにより従業員のモチベーションアップ、仕事に対するエンゲージメントが向上します。モチベーションやエンゲージメントの向上は、営業生産性の向上にも寄与します。
組織を活性化する
インセンティブ報酬制度によって組織やチーム内で良い競争意識が芽生え、お互いが切磋琢磨し合う環境や企業文化を創出できます。その結果、個人だけではなく組織全体も成長し、組織の活性化が期待できます。
営業活動と経営戦略の方向性の一致させる
インセンティブ報酬制度を活用すると、営業活動と経営戦略の方向性を一致させることができます。
例えば、これまでのパッケージ製品ではなく先を見据えてサブスクリプションサービスの販売をおこないたいと考えた時、サブスクリプションサービスの販売にインセンティブを多く設定すれば、営業はサブスクリプションサービスの営業活動に注力するようになるでしょう。企業の向かうべき方向と、営業活動の方向性の足並みを揃えることができるのです。
インセンティブ報酬制度に向いている職種
インセンティブ報酬制度は、営業職向けに取り入れている企業が多いかと思います。それは、営業成績に連動した金銭的インセンティブが、導入しやすく、効果的だからです。ただ、ここまでご紹介したとおりインセンティブにはさまざまな種類があるので、マーケティングや企画、広報、購買、人事、総務など、あらゆる部署で導入できます。
インセンティブ報酬制度の設計方法
では、インセンティブ報酬制度を導入したい場合、どのように設計を進めれば良いのでしょうか。その設計方法を解説します。
導入の目的を明確に持ち、リーダーシップを発揮する
インセンティブ報酬制度を導入する際は、この報酬制度の導入目的を明確にしましょう。「多くの企業で取り入れているから」などのような不明確な目的だとインセンティブ報酬制度の推進がうまくいかず、形ばかりの制度となる可能性が高くなります。従来の報酬体系からの変更には従業員からの反発が生まれる可能性もあるため、明確な目的とリーダーシップを持って導入を推進する必要があるでしょう。
制度の対象を設定する
インセンティブ報酬制度の対象を設定します。部署なのか個人なのか、どの職種なのか、成績評価対象期間はどこからなのか、インセンティブの対象とする製品やサービスはどれなのかなど、明確に対象を設定しましょう。何を対象とすべきかが定められないという場合は、現在抱える企業の課題に立ち返りましょう。従業員の意識や行動の課題、チームや個人、製品ごとの売上成績の課題など、現在の状況から改善(もしくは促進)するべき対象はどこかをしっかり見定めるようにしましょう。
評価基準を決める
対象・主体を明確にしたら、次は何を評価基準とするのかを明確化します。例えば営業職においては売上目標達成が一般的ですが、契約が複数年の場合や支払方法が一括の場合など、自社の方針にあわせて指標を設定しましょう。
インセンティブ報酬の内容を定める
次に、具体的なインセンティブ報酬の内容を設定します。金銭的インセンティブを取り入れる場合には、固定給与報酬とインセンティブ(歩合)報酬の比率を決める必要もあります。インセンティブ報酬には、様々な設定の仕方があり、下記のようなタイプから決めていくことになります。
設定のタイプ | 例 |
売上目標達成時に定額支給 | 営業目標達成した場合に10万円を支給 |
売上に対して決まった一定割合を支給 | 売上の5%を支給 |
売上の額に応じて支給割合が変動 | 5000万円未満は5%、5000万円以上は10%を支給 |
売上目標達成率のレンジに応じて、支給割合が変動 | 達成率80〜100%なら売上の5%を支給、 達成率101%〜120%なら売上の7%を支給 |
なお、米国企業の多くでは、最後の売上目標達成率のレンジに応じて支給割合を変動させる制度を取り入れているところが多いです。
運用方法を設計する
ここまでインセンティブ報酬制度の内容が固まったら、どのように運用をおこなうのかを設計します。いつから導入するのか、従業員への通知と承認はいつどのようにおこなうのか、インセンティブ対象の集計はいつどのように実施するのか、インセンティブ報酬制度の見直しのサイクルはどのようにおこなうのかなどの運用フローを整備しましょう。
分析・改善をおこなう
インセンティブ報酬制度を取り入れたとしても、当初想定していたような効果が得られるようになるとは限りません。実際に導入したあとには、パフォーマンスがどのように変わったのか、従業員の意識がどのように変わったのか、組織の雰囲気はどのように変わったのかなどを、測定・分析し、必要に応じて継続的な改善をおこないましょう。
インセンティブ報酬制度設計の際の注意点
インセンティブ報酬制度を設計する際にはいくつかの注意点があります。これから解説する注意点を押さえて設計するようにしましょう。
達成可能な目標を設定する
インセンティブ報酬制度を設計しても、従業員が達成できる目標でなければかえってモチベーションやエンゲージメントの低下を招きます。インセンティブ報酬制度を設計する際は、目標設定が適切かどうかに注意しましょう。目標設定においては、SMARTのフレームワークを活用するといいでしょう。
制度導入には丁寧なコミュニケーションを
インセンティブ報酬制度を導入する前に、従業員へのヒアリングなどを通して新たな報酬制度導入に対する反応も想定し、対応策を考えておきましょう。
インセンティブ報酬制度を変える際には、従業員が心理的な不安を抱えたり、評価基準への不満が溜まったりすることも考えられるため、報酬制度の導入には丁寧なコミュニケーションが求められます。
運用管理のための必要な環境を整える
インセンティブ報酬制度を導入する際は、適切な運用・管理がおこなえる環境を整えることが重要です。インセンティブ報酬の対象となる従業員多く、評価基準や報酬内容も多岐にわたる制度設計を考えると、必然的にインセンティブ報酬の管理も煩雑になります。従来型のテクノロジー(例えばExcel)を利用して力技で管理する方法もありますが、作業ミスが起こったり、膨大な労力が必要となったりすることを考えると、専用の報酬管理ツールを導入することがインセンティブ報酬制度の成功には必要です。
インセンティブ報酬管理にはXactly Incent
インセンティブ報酬制度の運用管理には、適切な環境整備が必要です。一般的に、効果のある報酬制度を導入しようとすると、多岐にわたる報酬設計、複雑な報酬計算、既存システム(HRシステムや会計システム)との連動が重要になるため、そのためのツールが不可欠です。その支援ツールとして、全世界で多くのお客様に導入されているXactly Incentが効果的です。
Xactly Incentでは、さまざまな報酬プランを作成・管理できます。インセンティブ報酬の支払いにおけるワークフローも管理でき、煩雑なインセンティブ報酬制度の管理を、楽に、ミスなく、かつ柔軟にします。レポートやダッシュボードで報酬支払い予定データなども可視化できるので、営業担当からは、想定支払いインセンティブ報酬額の確認も容易にでき、日々の活動のモチベーションアップに繋がります。
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Xacty Incentの導入事例
Linkedin(リンクドイン)
世界最大級のビジネス特化型SNSを運営しているLinkedInでは、Xactlyの製品を活用して年々成長を遂げています。
LinkedInでは営業活動の効率を向上させるため、営業マネージャーが迅速に営業戦略の決断を下せるようなソリューションを必要としていました。
Xactly Incentを導入し、戦略的な営業活動が可能になったLinkedInは当時125人であった営業担当者が5,000人になるまで成長しました。
Vodafone(ボーダホン)
Vodafoneでは、従前大規模データベースを構築して報酬支払い処理をしており、従業員の通知にはメールを介してExcelで行っていました。ただこれでは管理負荷、透明性、証跡の観点で望ましくなく、Xactly Incentを導入することを決めました。
導入後は報酬管理の自動化が実現され、処理時間の短縮、管理精度の向上が達成されました。また会社の望む結果が得られていない時、Xactly Incentで柔軟かつ迅速にインセンティブ報酬プランを変更し、チームや個人の行動変容により、望ましい成果をもたらすことができたという成果もあります。
まとめ
今回は、インセンティブ報酬の目的や種類、導入によるメリットや設計方法などをご紹介しました。
インセンティブ報酬制度には、従業員のモチベーションやエンゲージメントアップや組織活性化、生産性の向上、経営戦略に一致した従業員の行動変容としての活用など、経営管理において重要な要素です。今回紹介したインセンティブ報酬制度の設計方法や注意点を参考に、ぜひ貴社でもインセンティブ報酬制度の新たな導入や変革をしてみませんか。
また、企業ごとのインセンティブ報酬制度設計の進め方のご相談、また実際のインセンティブ報酬管理を支援するツールのご用命はぜひXactlyまでお問合せください。
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