営業報酬プランを定める際は、営業担当にモチベーションを与えると同時に、売上の最大化も図らなければなりません。ハーバードビジネススクールによると、米国企業は毎年、平均8,000億円以上を営業組織に費やしていますが、そのうち2,000億円は純粋に報酬として支払われているものです。言うまでもなく、営業報酬は企業にとって巨額の投資になります。
それゆえに、効果的な営業インセンティブ制度の設計は大変な作業です。多くの企業は、どのような報酬体系を採用すべきか、またボーナスやコミッションの最適な報酬はどうなのかを見極めるのに苦慮しているでしょう。そこで、本ブログでは、「ボーナス」ベースの報酬体系と、「コミッション」ベースの報酬体系の違い、それぞれの長所と短所、各報酬制度が推奨されるケースをご紹介したいと思います。
ボーナスとコミッションの違いとは?
事業目標を達成するためには、企業のニーズに合わせて営業報酬プランを調整する必要があります。ボーナスとコミッションは、どちらも一般的な報酬体系として利用されているものです。
欧米企業の営業担当の多くは、個人の売上目標を達成すると支給されるコミッションベースで収入を稼いでいます。ボーナスは通常、営業職以外の従業員に支給されています。また営業担当向けボーナスには、SPIF(Sales Performance Incentive Fund;営業パフォーマンス インセンティブ ファンド)というものもあります。どちらも効果的にパフォーマンスを上げてもらえる報酬体系ですが、まずはこの2つの違いを見てみましょう。
報酬体系
コミッションとボーナスの最大の違いは、その構造と営業担当に支払われる金額です。
コミッション制
コミッション制度では、各営業担当者のパフォーマンスに応じて報酬額が変動します。コミッション率によって、営業担当者に支払われる金額が決まるのです。営業担当者は、製品やサービスを売り上げるごとに、その売上から一定の割合(例. 売上高の6%など)をコミッションとして獲得します。
より優れたパフォーマンスを促せるように、多くの企業は、営業担当者がクォータ、つまり売上目標を達成するとコミッション率も上がる体系を取り入れています。営業担当者に売上目標を達成するだけでなく、それを上回るパフォーマンスを発揮してもらうには、このような強力なコミッション体系が重要です。
ボーナス制
ボーナスとは、販売奨励金として明示される金銭的報酬です。金額は営業担当者ごとに異なり、一定の比率または固定額として定められます(基本給の4%または7,000ドルなど)。ここで重要なのは、ボーナスは支給するか、しないかの二者択一ではないということです。例え売上目標を達成できないとしても、ボーナスの何割かが支払われるのであれば、営業担当者の士気が下がることはないでしょう。
報酬額を決める要素
営業報酬額は、インセンティブ計画における様々な要素によって決まります。大多数のインセンティブ制度において、営業担当は報酬を得るために売上目標を目指しますが、売上目標は必ずしも営業担当の報酬額を決定するものではありません。
コミッション制の場合
売上目標は営業担当の報酬に関係する要素の一つですが、本質的には、各営業担当の報酬額を決めるのは営業パフォーマンスです。高い営業パフォーマンスを達成した営業担当には、さらに高いコミッション率が適用される仕組みがあれば、営業担当はより優れたパフォーマンスを目指せるようになるでしょう。
ボーナス制の場合
ボーナス制度で報酬を得るための重大な要素も、同じく営業担当のパフォーマンスになります。しかし、コミッションとは異なり、ボーナスは一般的に固定額として設定され、企業の目標や、個人の目標、またはその両方の達成が影響します。すべての部門の従業員のモチベーションを促せる制度です。
ボーナスvs.コミッション:最適な報酬体系を判断する
実際のところ、ビジネスごとに必要な報酬プランは異なります。インセンティブ戦略を策定する前に、まずは次の点について考えてみてください。
営業部門にどのようなパフォーマンス(売上目標、売上など)を期待していますか?
営業担当には、インセンティブ報酬とは別にどのくらいの基本給を支払う予定ですか?
営業担当には、金銭以外にも報酬を提供する予定ですか?
予算の範囲内ですべての目標を達成させられるように営業担当のモチベーションを上げるには、どうすればいいでしょうか?
会社として(営業として)目指すべき目標と、これらの質問に対する答えがあれば、営業のニーズを把握し、より確実なプランを立てられるようになります。そして、売上予測に基づき、営業担当に支給可能な金額を特定し、営業担当にモチベーションを与えられるインセンティブ制度を作成できるようになるのです。
コミッションが推奨されるケース
報酬制度の中で最も一般的なコミッションは、基本給に加えて支給されることもあれば、そうでない場合もあります。しかし、大多数の企業は、基本給とセットでコミッションを支払っています。コミッション制度は、一般的に以下のようなケースで取り入られている傾向があります。
- 成長が右肩あがりの事業の営業チーム
- 責務の増加が予想される営業職
- その他の顧客向け営業職
製品やサービスを販売した営業担当に合理的に支給可能な金額が分かっている場合は、コミッションを利用するといいでしょう。
ボーナスが推奨されるケース
ボーナスは、基本給とセットで従業員に支給されます。一般的には、以下のようなケースに適した報酬制度です。
- 安定的な成長をしている事業の営業チーム
- 管理責務が多い営業職
- その他の営業以外の職種
ボーナスは、比較的ビジネスが安定しており、営業担当者に相場の報酬を支払うことを重視する場合に推奨される報酬制度です。各営業担当者の市場価値を反映した制度を策定してください。
両方を取り入れるべきケース
状況によっては、コミッションとボーナスを組み合わせた報酬制度が有効なケースもあるかもしれません。営業部門以外にインセンティブを検討している際の選択肢と言えるでしょう。実際、役職に関係なく、従業員の行動は報酬によって促されます。営業職以外の従業員にボーナスを支給することで、商談の成立に留まらず、イノベーションやパフォーマンス向上につながるかもしれません。
まとめ:ボーナス vs.コミッション
コミッションとボーナスは、どちらも営業担当者を公正に労い、将来の営業パフォーマンスを向上させることができる仕組みです。どのような報酬体系にするとしても、必ず営業部門の生産性を上げ、ビジネス目標の達成を促せる制度にしてください。ビジネス目標を念頭に置いた報酬戦略を策定することが、成功するビジネスプランへの第一歩です。
報酬プランの設計やパフォーマンスを強化する方法については、「営業報酬プラン設計の決定版ガイド」にまとめておりますので、ぜひダウンロードしてご一読ください!