フォーキャストは営業部門だけのものか?
売上フォーキャストは、営業部門以外には関係のないものと思っていませんでしょうか?このフォーキャストを通じて、営業リーダーは、ビジネス全体のあり方に影響を与えることができる存在なのです。
売上フォーキャストは、営業部門が営業部門のために行うものと思われがちです。実際、フォーキャストは、営業部門の全員が関わり、営業部門内で利用・管理される様々なシステムからデータを集めて行われます。そして最終的な営業実績に基づき、目標に対する達成度はもとより、フォーキャスト精度についても評価されます。
このように、フォーキャストを立てることは、限りなく営業部門に特有の活動のように見えますが、フォーキャストを立てる目的は営業部門の枠をはるかに超えています。確かに、売上フォーキャストは営業パフォーマンスの管理に役立つものですが、それだけではなく、企業は売上フォーキャストを通じて、事業の成長を見通したり、期待値を設定したり、ビジネスの健全性を担保するための対策を講じたりしています。
つまり、正しくフォーキャストを立てられるかが、あらゆるビジネスの成功を大きく左右します。今日の営業部門において、売上のフォーキャストをいつも高い精度で実施しつつ、市場の変化に柔軟性に優れている組織があるかは疑問です。Miller Heiman Group社によると、80%の企業で、売上フォーキャストの精度が25%以上外れていることが明らかになっています。フォーキャストを大きく外しているということは、営業の売上目標の達成が難しくなっているだけでなく、経営管理そのものに問題を引き起こすという厄介な事態を招きます。これでは、最高レベニュー責任者(CRO)の平均在職期間がわずか18か月であることも不思議ではありません。
しかし、ピンチはチャンスでもあります。フォーキャストの問題を解決することができれば、営業部門はすべての責任を追求されずに済むどころか、社内のヒーローもなれるのです。
売上予測の精度を向上させることでポジティブな影響をもたらす4つの領域があります。ここからはそれぞれについて見ていきましょう。
フォーキャストを外したらどうなるか?
製造業、サービス業、小売業、B2B、オンライン、実店舗などの業界や業態にかかわらず、企業は中核となる活動にリソースを割り当てる必要があります。当然このリソース配分は、必要なリソースの予測に基づき行わなければなりません。その際に大きく影響するのが、売上フォーキャストです。売上フォーキャストに応じて、事業プランのあらゆるところに影響を及ぼします。
例えば、製造業では、売上フォーキャストに基づき、確保するべき在庫量、材料の発注量、製造部門の人員数、製品を顧客に届けるために必要な各種流通チャネルのリソースなどが調整されます。つまり、サプライチェーン全域に影響が及ぶのです。
物理的な拠点を構えておらず、物理的な製品を生産していないビジネスでも同様です。SaaS企業では、売上の増加が予測される場合、必要となるクラウドコンピューティングのリソースを調整したり、新規顧客とのエンゲージメントを促すために新たなカスタマーサクセスの役職を設けるなどの取り組みが必要になるかもしれません。
売上をフォーキャストした値に実際の売上が届かない事態になると、これらの投資のタイミングを見誤ったことになり、最悪の場合、その投資が無駄になってしまいます。それだけでなく、組織中に無駄な仕事を作り出すことにもなります。企業の会計的には、利益率の低下を招くでしょう。挙句の果てには、「営業部門が必要というから投資したのに・・・」などと言われるようになってしまうのです。このようなことが毎年繰り返されれば、営業部門は窮地に追い込まれることになるでしょう。
フォーキャストが外れるにしても、売上予測した値を上回る場合は痛みは少ないのですが、それでも問題がないわけではありません。例えば、製造ラインの滞り、注文処理の遅れ、カスタマーサポートの品質低下、短期での新規採用の集中などの問題が起こることが考えられます。
反対に、売上フォーキャストを正確に立てることができれば、これらの投資が報われ、将来予測に基づく投資への信頼が上がります。精度の高い売上フォーキャストを実現することで、営業部門はビジネス全体のインテリジェンスを備えた重要なエンジンとしての地位を確立し、他の部門と協力的な関係を築くことができるのです。
フォーキャストがCXに与える影響
近年、ほぼすべての上場企業の年次報告書では、おそらく最初のページに「カスタマーエクスペリエンス」(CX)の文字が刻まれるようになっていると思います。CXは、しばらく前から重要な差別化要因と見なされているのです。2014年のGartner社の調査では、89%の企業が2年以内にほぼCXを軸にして競争するようになることが予想されていました。その後の2016年にFrost & Sullivan社が行った調査では、2020年までに、価格や製品よりも、CXが主要なブランドの差別化要因になることが指摘されました。
このようにCXが叫ばれるようになり、今まで以上にカスタマーサポートやカスタマーサクセスの重要性が高まりました。現在では、顧客から問い合わせを受けた時の企業の対応が、顧客関係の成否を分けている可能性があります。
売上フォーキャストはCXにどのような影響を与えているのでしょうか。
営業部門は、フォーキャストとして、企業に期待できる成長を数値で示しています。サポート部門は、このフォーキャストデータに基づき、電話、電子メール、インスタントメッセージ、ソーシャルメディアなどで顧客とやり取りを行う人員やリソースを増やす可能性があります。それは、重要なCXを最適なレベルに保つためです。人員増加に伴い、トレーニング費用の増加やコンタクトセンターの拡大も必要になるかもしれません。また、サポート部門が抱えている長年の課題である、スタッフの離職率に注意する必要性も高まる可能性があります。
フォーキャストした数値に届かなければ、コンタクトセンターの計画が無駄に終わります。元来、コストに敏感なカスタマーサポート部門は、新規採用を見送らざるを得ず、投資が無駄になり、スタッフの士気は下がるかもしれません。フォーキャストを大幅に上回れば、コンタクトセンターは不意打ちを食らい、結果として、KPI(応対時間、一次解決率、顧客満足度など)が低下する可能性があります。
フォーキャストの精度が向上すれば、サポート部門やサービス部門は適切なタイミングで組織を拡大し、予算を効率的に活用し、CXレベルを維持または向上さえさせられるようになります。そして、営業部門は、サポート部門の目標達成を支援する重要な存在となることができるのです。フォーキャストの精度が向上すれば、サポート部門やサービス部門は適切なタイミングで組織を拡大し、予算を効率的に活用し、CXレベルを維持または向上さえさせられるようになります。そして、営業部門は、サポート部門の目標達成を支援する重要な存在となることができるのです。
財務部門への影響
財務部門は、売上のフォーキャストの数値を直接的に必要とする部門です。この予測値に基づき、四半期の目標を定め、必要な経費を見積もり、各部門の予算を割当て、そして他のビジネス上の投資タイミングとスケジュールを確定させています。
フォーキャストを下回るような結果になったら、財務部門は、各部門に苦渋の決断が必要になることを伝える嫌な役回りをさせられることになります。各部門は、その決断に応じて対応しなければなりません。会社のワクワクする将来展開を断念させる(「新しいソフトウェアはいらない!新しい人員はいらない!オフィスは拡大しない!」など・・・)役割を強いることは、社内における財務部門の立場を悪くするでしょう。財務部門と営業部門の関係も悪くなります。誰も社内で悪役に回りたくはありません。ところが、営業部門がいつも精度の低いフォーキャストを立てている限り、財務部門はいつも悪役の立場に追い込まれてしまいます。
一方で、正確な売上予測を立てることができれば、事業プランは進展し、財務部門が嫌な役回りをさせられることはなくなります。健全なキャッシュフローを予測できるようになり、営業部門と財務部門の間の対立や不和も払拭できるでしょう。
人事(採用、トレーニング、ランプアップ期間)への影響
売上高が大幅に増加するというのは、それだけ受注が増え、生産能力の拡大が必要になり、サポートが必要な顧客の数も増えることを意味します。どれも、従業員の増加につながる要素です。人を雇うということは、採用、トレーニング、ランプアップ期間への投資と、それらに付随する様々なコストが発生することを意味します。また、人事部門や人材管理部門の人員も増え、それらに関連するあらゆる費用が発生する可能性もあります。つまり、企業の成長にはコストが付いて回るのですが、そのコストは売上のフォーキャストに基づき見積もられているものなのです。
フォーキャストを下回る結果になれば、人事部門は窮地に追い込まれます。フォーキャストに準じて、先んじて投資したシステム、サービス、人材が不要となるからです。運が良ければ、人件費が先行投資された程度の事態で済むでしょうが、最悪の場合、雇用やキャリアが危ぶまれることになります。募集したばかりの候補者の面接が突然中止になったり、新人が解雇されることも考えられます。どちらも、企業の人事活動にとって良いことはありません。特に今は、企業が匿名でレビューされる時代ですので企業の評判にも関わってきます。
正確なフォーキャストを立てることができれば、すべてが違ってきます。必要な時に、必要とされる場所へ、人材が採用、配置され、戦力を確保することができます。必要とされるトレーニングにも対応できます。人事部門は、四半期ごとに考え抜かれた人材配置を実現することができるのです。正確なフォーキャストは、企業の成長を促すのです。
その他の悪影響
上場企業であれば、売上のフォーキャストとは株価を左右するものであり、フォーキャストが外れれば(上方でも下方でも)、株価が下がり、株主全員が被害を受けることになります。物理的なスペースを拡大しようとしている事業で楽観的なフォーキャストを立ててしまえば、予定よりも四半期や1年早くリース契約を終了しなければならない事態に陥るでしょう。収益性に悪影響が及び、施設部門が苦境に追い込まれます。根拠もない楽観的なフォーキャストは、PR、カスタマーマーケティング、デジタルマーケティングなどのマーケティング部門への予算を確保しておきながら、マーケティングプランが出来上がった後に予算縮小が必要になり、マーケティング担当者の労力を無駄にする可能性があります。このような影響が、波及的にビジネス全域に及ぶ可能性があるのです。
経営者への調査によると、フォーキャストの誤差が13%外れると、株価は6%下落するが、フォーキャストの誤差が5%以内の場合、株価が最大46%上がると回答しています。
フォーキャストの精度によって、全く正反対の結果がもたらされます。正確なら、株式市場を適切にサポートし、従来通りに株価が上昇するのです。正確なフォーキャストに基づき、売上を達成することができれば、事業拡大が妥当であること自信を持って進めることができるようになります。十分なマーケティング活動を最適なタイミングで行うことができ、新規顧客の獲得という新たな成果を得ることができるのです。
必要な備えをして社内のヒーローになろう
正確な売上のフォーキャストを立てられる営業リーダーは企業にとって重要な人材です。正確なフォーキャストは、ビジネスをさらに繁栄させるための会計期間ごとの投資や改善の原動力になるからです。ただ、55%の営業リーダーが自身の売上フォーキャストに自信を持てず(Gartner社調査)、事業プランに影響を与えるような問題が発生した際には、その根本原因として自分自身を責めてしまうでしょう。
そうではなく、むしろ社内のヒーローになりませんか?
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