公開日 2022.02.28  更新日 2023.07.20

売上予測(フォーキャスティング)とは? 必要なデータや計算方法、正確な予測を立てるためのツールをご紹介

多くの企業で事業計画の根幹を担っている売上予測。欧米の企業では「フォーキャスティング」と呼ばれ、昨今では最新のツールを用いながらその予測の精度の向上に努めています。日本企業においては営業予想(予測)、着地予想(予測)、ヨミなどと呼ばれ、取り組まれている企業も多いと思われますが、一方、なぜ売上予測が企業にとって重要なのかが、十分に理解できていない方も多いと思います。そこで、本記事では売上予測(フォーキャスティング)がいかに経営や営業業務に影響するのかを説明し、正確に計算する方法や、その際に役立つツールについても紹介します。

目次

    売上予測(フォーキャスティング)とは

    売上予測(フォーキャスティング)とは、文字通り、定めた期間に置いて、今後の売上を予測することです。予測の際は、過去の売上実績や社会の動向などのデータを分析したうえで算出を行います。多くの企業は、売上予測に基づいて事業を進めており、経営においては非常に重要なファクターといえます。

    売上予測と売上目標の違い

    売上予測と売上目標の違いは、データに基づいた算出結果であるか否かが大きいです。

    売上目標とは、任意の時期までにどれほどの売上を達成できるかを設定した指標全般を指す言葉です。そのため、実際に達成可能な実力以上の数値や、第三者による期待を考慮した数値などが設定されることもあります。売上目標は、売上予測ほど、データに基づいて算出された数値でないとも言えます。

    フォーキャスティングとバックキャスティングの違い

    フォアキャスティングの対義語として、「バックキャスティング」があります。フォーキャスティングとバックキャスティングの違いは、思考方法です。

    バックキャスティングとは、将来の目標や望ましい結果を設定し、それらの結果を達成するために必要な要因や手段を逆算する思考方法です。戦略的な計画や政策の策定に役立ち、過去のデータや既知の結果を分析し、逆算して必要な要素や条件を特定することで、将来の成功への道筋を立てることができます。それぞれの思考方法に優劣は無いため、両者の特徴を生かし、実現したい目標や結果への達成確立をあげていくことが良いでしょう

    売上予測に必要なデータ

    では、売上予測を行う上で必要なデータとはなんでしょうか。

    業種や業態、企業規模、そして販売する商材によって異なってきますが、重要なデータは、企業内部で蓄積できる以下のような営業データになります。

    • 過去の売上実績
    • 現在の商談金額の総額
    • 各営業チームや各営業担当者の成約率
    • セールスサイクル(商談化してから制約までに要する期間)の平均値
    • サービスの更新率(あるいは解約率)

    また、場合によっては、市場動向や社会情勢、競合他社の状況や見通しなども考慮して考える必要もあります。

    予測精度の観点では、過去実績のデータが多いほどその分析の精度が高まるため、過去からのトレンドや、平均値の算出が重要になります。

    データの重要性については、こちらのブログでもまとめておりますので併せてご覧ください。

    売上予測の精度を上げるために必要なデータについて

    売上予測を立てることが重要な4つの理由

    売上予測を立てることが重要な理由は、以下の4つです。

    企業を適切に経営するため

    企業を適切に経営するために、売上予測を立てることは重要です。売上予測を元に、事業計画を立てていくためです。

    一般的に、企業は事業計画を元に資金調達を行います。しかし、事業計画が曖昧な場合、売上が経営者の想定を下回り、予定した資金繰りが困難になる可能性があります。借り入れによって資金調達している場合、予測と現実の乖離が大きいと、最悪その返済が滞り、倒産のリスクもあります。従って、事業計画は、精度の高い売上予測に基づいていることが重要なのです。

    予算を適切に管理するため

    予算を適切に管理するために、売上予測を立てることは重要です。売上予測を元に、必要な予算額を算出することが可能になるためです。

    予算管理においては、どれだけの資金をどの事業で使ってよいかを把握することが重要です。しかし、どの程度売上が期待できるのかを予測できなければ、使用可能な資金を把握することができません。

    また、売上予測が曖昧な場合、事業計画の見直しが求められるケースも多いでしょう。当然、予算額も見直されるため、その分、予算管理に負荷がかかり、非効率的なものとなってしまいます。

    人事を適切に管理するため

    人事を適切に管理するために、売上予測を立てることは重要です。売上予測を元に、従業員の採用枠を決めたり、人件費の管理をしたりするためです。

    多くの企業は、売上予測に応じて、人員を配置します。そのため、売上予測が曖昧な場合、どの部署にどのくらいの人員を割けば効率的な企業活動が可能なのかを判断することが困難です。人員不足もしくは過剰人員といった問題が発生する原因となり、結果的に、企業の収益性にも悪影響を及ぼす可能性があるため望ましくありません。

    生産・在庫を適切に管理するため

    生産・在庫を適切に管理するために、売上予測を立てることは重要です。売上予測を元に、生産管理、在庫管理が行われるためです。

    製造業などでは、売上予測を元に、商品の生産数を管理します。小売業などでは、売上予測を元に、在庫数を管理します。しかし、売上予測が曖昧な場合は、生産数や在庫数が適切かを判断することが困難です。予測が曖昧な場合は、機会損失を起こしたり、過剰在庫を抱えたりする可能性があるため、望ましくありません。

    >売上予測を精緻にすることで得られるメリットについてこちらの記事で解説しております。

    売上予測の計算方法

    売上予測の計算方法は大きく3つあります。

    過去の売上実績に基づいて計算する方法

    過去の売上実績に基づいて、売上予測を計算することができます。これは最もオーソドックスな方法になります。以下、「当月の売上予測」の求め方を例に、基本的な求め方をご説明します。

    当月の売上予測=1年前の同月の売上高×年間成長率

    ここで出てきた「年間成長率」とは、以下のような方法で算出できます。

    年間成長率=(1年前の同月の売上高-2年前の同月の売上高)÷2年前の同月の売上高

    仮に、1年前の同月の売上高が1,500万円で、2年前の同月の売上高が1,000万円だった場合、年間成長率は50%になります。これを踏まえて、当年の同月の売上予測を行うと、1年前の同月の売上高と年間成長率を計算することで、2,250万円が算出されます。

    上記は非常にシンプルな方法ですが、実際は複数年の実績を考慮したり、市場の拡大率を考慮したりして、より精度の高い売上予測を立てていきます。

    なお、この過去実績に基づく計算方法は、単価が安く、大量に売買されるような商材のB2Cビジネスにおいて採用されるケースが多く見られます。

    営業パイプラインを活用して計算する方法

    営業パイプラインを活用することにより、売上予測を計算することができます。

    営業パイプラインとは、各営業担当が持つ商談の商談発生から成約までの営業プロセスを可視化したものです。商談発生から実際に受注に至る前の成約率を自社の過去の実績などを前提に弾き出し、パイプラインにある合計金額に対して成約率をかけて算出します。

    たとえば期初にある商談(営業パイプライン)の合計額が10億円、その営業チームの平均成約率が50%の場合、5億円が見込める売上げとなります。

    単価が比較的高く、営業担当者が一つひとつの案件をフォローするような商材、B2Bのビジネスの売上予測の場合、この計算方法が採用されます。ただしこれはあくまで営業成約率の確率論に基づいた予測のため、より大きな企業との取引や案件になった場合には商談が複雑化したり、営業担当者のスキルや特性によって成約率が変化するためこれだけでは正確な見込みは弾き出せません。個々の商談に対して見込める商談とそうでないものを営業担当者やマネージャがアセスメントを実施し、それぞれの確度を見極めて最終的な予測を弾き出す作業が必要となります。

    この方法で売上予測を計算することを検討されている方は、こちらの記事も参考にしてください。

    データとテクノロジー(AI)を活用して計算する方法

    データとテクノロジーを活用することにより、売上予測を計算できるようになっています。特に近年は、一般企業でも高度かつ自動的な計算が可能なAIを業務に利用しています。以前から継続的に蓄積した営業活動データがあれば、AIを活用することにより、過去のデータに基づく成約率や個々の商談の確度を自動的に見極めることが可能となり、より正確な売上予測を得ることができるようになっています。

    実際、米国のITベンダーなどは、営業担当者が登録する営業パイプラインのデータを基にしながらも、入力された商談情報の充実度、担当者ごとの特性(保守的か否かなど)、過去の予測精度などを加味した、AIの予測値を使いはじめており、その企業も急増しています。

    >テクノロジーを活用して売上予測の精度を高める方法はこちらで確認いただけます。

    売上予測を立てる際のよくある課題

    売上予測は簡単に立てられるものではなく、多くの経営者や営業マネージャーが悩みを抱えています。売上予測を立てる際に起こりがちな事象を紹介します。

    感覚や気合に頼った予測を立ててしまう

    売上予測の数値をまとめる仕組みがない、もしくは数値がまとまってきてもその数字を信じられずになんとなくの感覚や気合で売上予測を立ててしまうことがよくあります。感覚や気合に頼った売上予測では、もちろん精度が高いとはいえず、結果的に誤った経営判断を引き起こしてしまうリスクもあります。

    それぞれの業界や企業にあった売上予測の算出方法を定義し、精度の高い売上予測を立てることが重要です。

    必要なデータが取れない

    精度の高い売上予測を立てるにはデータ収集が必要不可欠です。営業メンバーそれぞれにデータの必要性を説明し、理解してもらうことで営業活動の記録としてデータ入力がなされるようになり、結果的にデータ収集ができるようになります。売上予測を立てるのが営業マネージャーであれば、マネジメントの一環で各営業メンバーの商談データや営業活動データを集めるのが最初の一歩です。

    必要なデータについては記事上部で解説しているので参考にしてみてください。

    忙しくて売上予測を立てる時間がない

    営業マネージャーなど、自身も営業活動をしている場合も少なくありません。売上を作りながらメンバーのマネジメントなど、日頃から忙しくてなかなか売上予測を分析して予測値を見積もる時間を作れないという人も多いようです。

    しかし、適切に予算や人事の管理を行い、適切に経営を行うには売上予測が必要不可欠です。業務効率化のためのITツールの導入や、業務の優先順位の見直しなどを行い、売上予測を立てる時間作りを行いましょう。

    売上予測の精度を高めるために必要な4つのポイント

    売上予測の精度を高めるためには、4つのポイントをおさえる必要があります。

    売上予測の重要性を共有する

    売上予測の精度を高めるためには、社員に「なぜ売上予測を立てるのか」を説明し、売上を予測することへの意識を高く維持してもらうことが重要です。なぜなら、売上予測を立てるためには、社員が日々の業務で得た情報や成果を、データとして活用する必要があるためです。

    社員の意識を高く維持するためには、売上予測が経営判断や株価、資金調達にまで影響をあたえる重要な指標であると説明し、共通認識を作ることが必要です。

    商談情報共有のルールを作る

    売上予測の精度を高めるためには、営業社員がどのように業務へ取り組んでいるのかを網羅的かつスムーズに把握する必要があります。これは、前述の通り、売上予測を立てるためには、営業社員が日々の営業活動で得た情報や成果をデータとして活用する必要があるためです。営業社員の活動内容を正確に把握しなければ、商談に対するいいサイン、悪いサインを見逃してしまい適切な売上予測を立てることはできません。

    営業社員の活動内容を把握するためには、社内で情報共有のルールを厳密に設定することが重要です。バラバラな情報共有の方法が取られると、曖昧で統一性もなく、売上予測やその他の分析が困難なデータが収集されてしまいます。

    統一された予測基準を作る

    マネージャも含む営業社員はついつい自分の勘や直感、経験あるいはその社員が持つ性格に基づいて商談の確度を見極めてしまう傾向があり、結果として主観的な売上予測となってしまいます。個人としての売上予測ではなく、組織、会社としての売上予測にしていくためには組織内において商談の進捗状況に応じてどのような確度を設定するか、その統一された基準を作成し共有しておく必要があります。バラバラな予測基準や主観的な予測を排除し、案件確度の設定基準を統一化して行く事で会社としての売上予測精度が高めることが可能になります。 

    テクノロジーを活用する

    売上予測の精度を高めるためには、テクノロジーを活用することも重要です。テクノロジーを活用することで、人の計算では困難な複雑なファクターから分析することで、将来予測を導き出したり、多大な工数がかかる作業も自動化によって省力化することも可能になります。また、マニュアル作業ではミスが発生することも、テクノロジーを使うとミスを回避できるため、正確な予測を立てていくという観点からは重要です。

    具体的なテクノロジーとしては、以下のようなツールの活用方法があります。

    Excel

    Excelは、広く世界的に使用されている表計算ソフトです。Excel 2016から搭載されている「予測シート」という機能を活用する事で、売上げ予想を立てることも容易になりました。ただし、予測には膨大なデータを用いることもよくあり、その場合、動作が遅くなったり、データが破損したりといった問題が発生することも考えられます。データ編集が各個人で容易にできてしまうことから数字の異なる予測データが複数存在してしまったり、リアルタイムに組織内で共有することも考慮すべきポイントにはなります。Excelは身近で利用しやすいツールである反面、利用を続けることで、結果的にデータ作成や編集にかかってしまう工数は膨大になり、実は隠れたコストになっているとも言えます。

    SFA/CRMツール

    SFA(Sales Force Automation)/CRM (Customer Relationship Management)は、営業支援/顧客管理システムという意味のツールです。営業が管理している様々な商談情報や、お客様の取引情報などを一元管理するのに役立つ、様々な機能が実装されています。具体的には、セールスフォース社のSales Cloudや、マイクロソフト社のDynamics 365などが挙げられます。これらのツールではその時点での最新スナップショットデータしか保持していないため、過去の売上実績や予測データを参照したり比較したりすることが難しいことが考慮すべきポイントです。従って、過去の実績に基づいた比較や将来予測をしたい場合、データを抽出して、Excelなどで分析していることも少なくありません。

    フォーキャスティング専用ツール(Xactly Forecastingなど)

    Xactly Forecastingに代表されるフォーキャスティングツールは、SFAと連携して売上予測とパイプライン分析の自動化を行う専用ソリューションです。データを自動取得して精度の高い売上予測を出す機能や、AI/MLを活用して成約の可能性が高い商談を導き出す機能、パイプライン分析に基づき営業担当者へのコーチングしていく機構、過去データ含めた各種データをあらゆる角度から瞬時に表示するダッシュボード機能などを備えています。

    より精度の高い売上予測を実現し、企業経営を支える礎を築きたい場合は、フォーキャスティング専用ツールの活用をご検討ください。

    売上予測を向上させた事例

    売上予測の要諦はデータである以上、先般触れたフォーキャスティング専用ツールの活用が、売上予測の向上には一番寄与します。ここでは、フォーキャスティング専用ツールであるXactly Forecastingを用いた事例をいくつか紹介します。

    ・ABMフェデラル (ABM Federal) 社

    アメリカを本社で、IT業界でビジネスを行うABM Federal社。同社は、従来、典型的なレポートツールを年配の営業担当者が使用して、売上目標に対する進捗を管理していました。しかし、企業として売上を常に予測可能な状態にして、売上向上を行うべく、Xactly Forecastingを導入して営業パイプラインの「見える化」に成功し、売上予測の精度を向上できました。詳しくは以下のリンクからご覧ください。

    >【お客様事例】DXを推進し、営業パイプラインの「見える化」に成功

    ・メタコンプライアンス(Meta Compliance) 社

    サイバーセキュリティ・コンプライアンス分野のリーディングカンパニーである同社はロンドンに本社を構えています。従来、直感的な意思決定も多くあったフォーキャストプロセスを刷新。データドリブンな売上予測が可能になり、精度を大幅に向上させることに成功しました。詳しくは以下のリンクからご覧ください。

    >【お客様事例】売上予測精度を向上し、営業人材の大幅増員にも寄与

    Xactly Forecastingを導入したお客様への調査結果

    セントルイス・ワシントン大学がXactly Forecastingを導入しているお客様に実施した独自調査の結果によると、売上予測の精度向上はもとより、その過程で改善した営業パイプライン管理によって、年間商談件数が19%アップ、販売単価が58%アップ、セールスサイクルを最大59%短縮という導入効果が明らかになりました。詳しくは以下のリンクからご覧ください。

    Xactly Forecasting 導入効果のレポート

     

    世界中の企業で活用されており、様々な効果が発揮されているXactly Forecastingの詳細をご覧になりたい方はこちらからぜひご確認ください。

    すぐに分かるXactly Forecastingデモのご紹介
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    執筆者

    松波 孝治 Xactly(エグザクトリー)株式会社 マーケティング本部長

    松波 孝治 | Xactly(エグザクトリー)株式会社 マーケティング本部長

    Xactly日本法人のマーケティングを全体統括。大学卒業後、一環して外資系IT企業にて、マーケティングはもとより、コンサルタント、経営企画などにも従事。

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