テレビや映画に登場する「営業」の描写は必ずしもポジティブなものではありません。そのため多くの新人営業担当者は、「営業とはそもそもどういった仕事なのか?」、「どうすれば成績を残せるのか?」といった内容について、偏ったイメージを持っている可能性があります。
今日のようにテクノロジーが発達した世界では、顧客はこれまで以上に様々な情報を入手できるようになっています。企業も担当者も、営業方法についてますます精通する必要があります。つまり営業部門の責任者は、情報量が多く競争の激しい環境の中で販売量を増やし、高いパフォーマンスを維持するためのトレーニングについて戦略的に考える必要があるということです。
販売量を増やすには、営業へのコミッションの仕組みを利用したり、セールスコーチングのテクニックを参考にしたりと、さまざまな方法があります。ここからは、より多くの商談を成立させ、担当者のモチベーションを高めてパフォーマンスのピークを継続させるための方法をご紹介しましょう。
1. 全ての会話をお客様中心に
商談の際、自社の製品やサービスの機能についてすぐにでも話し始めたい、と思うことがあるかもしれません。しかし、お客様の立場に立って考えた方が会話をスムーズに進められるものです。
実際、お客様中心に会話を進める場合、営業担当者には入念な準備が必要です。お客様が日常的にどんな課題を抱えているか想定し、そこに焦点を当てて会話を進めることで、その解決策として自社の製品を提案することが非常に容易になります。お客様との最初のコンタクトを「売り込み」ではなく「会話」として設定すると、効果的な商談が可能になるのです。
2. パフォーマンス向上のための目標設定
目標は、成功を望む営業部門に不可欠な要素です。目標が高すぎると担当者のやる気を削いでしまい、効果的な動機付けができません。一方で目標を低く設定しすぎると、簡単に目標を達成してしまうためにチャンスを逃してしまう危険性があります。
そこで、ストレッチゴールの設定をおすすめします。ストレッチゴールは、現実的な目標を達成するために設定する「挑戦的な目標」で、組織にモチベーションや刺激を与えるものです。これは、販売量やパフォーマンスの向上を目的とした目標設定に、特に重要なものです。
例えば、普段は1日20件の電話をかけている担当者が、1週間後には1日30件の電話をかけるという目標を立てたとします。このようなストレッチゴールを達成すれば士気が高まりますし、プロセスに大きな変更を加えることなく販売量を増やすことができます。
3. 営業部門とマーケティング部門の連携強化
多くの企業では営業部門とマーケティング部門との間に溝があります。しかし、成功している企業では、この2つの部門が連携して効果的なキャンペーンを展開できるような関係を築いています。営業担当者は最前線でお客様の関心事を把握し、マーケティングはバックエンドで新しいリードを獲得したり、見込み顧客をアクションへと誘導するためのサポートを行ったりしています。この2つの部門が歩調を合わせなければ、商談を獲得し、ステージを進め、成約に結びつけることはできません。
営業部門とマーケティング部門が連携すれば、コンテンツやキャンペーン、リードを安定して獲得する流れができ、営業を成功に導くでしょう。このように部門間の連携に力を入れることで、売上を一気に伸ばすことができます。
4. 営業フォーキャストから始めよう
ビジネスの規模を問わず、売上予測は必要なものです。実際、80%の企業の売上実績は、予測から25%以上も下回っています。「25%以上」という割合をわかりやすく例えるならば、「四半期末にテーブルの上に大量のお金が残ってしまっている状態」と言えます。大変な状況であることがお分かりいただけましたでしょうか?
正確な売上予測は、商談の見える化や営業担当のパフォーマンス向上のみならず、数値予測に対する信頼性向上にもつながります。売上拡大に向けて目標やターゲットを設定する際に、経営陣がより賢明な判断を下すことを可能にするのです。
企業が一度優れたフォーキャストのプロセスを確立できれば、その後は正確で信頼性が高く、適応力のある売上計画を立てることができ、安心してビジネスを進めることができます。
5. やる気のある営業担当者の雇用
どんな仕事においても、決断力と自己啓発力は、トップレベルのパフォーマンスを発揮する人の重要な特性です。営業という仕事においては、これは特に顕著です。人事部門と営業部門のリーダーは候補者の行動を観察し、候補者がどのような考えを持っているかを引き出す質問をすべきでしょう。
やる気のある社員は、見込み顧客の開拓や商談成立に向けて迅速に行動し、「さらに一歩先へ」と率先して行動する可能性が高いです。組織全体が「頑張り屋さん」で構成されていれば、売上や全体のパフォーマンスが向上することは間違いありません。
6. 売上とデータ管理の徹底
データドリブンなのセールスアプローチによって、競合他社と比較して、最大で6%収益性が向上します。
データと人工知能(AI)を活用して賢明な意思決定を行い、未来志向のアプローチで売上を戦略的に考えることで、企業は営業力をコントロールできるようになるのです。
データを活用せずに行う意思決定は、戦略的なものとは言えません。パフォーマンスデータは戦略的な営業計画を設計し、適切な行動を促し、会社の目標を達成するために不可欠である豊富な知識を提供してくれます。
また、データは売上管理とプランニングプロセスの中核をなすべきものです。さらに、営業のキャパシティや個人クォータ(目標)の計画、テリトリーの調整、インセンティブ設計、パフォーマンスの分析など、すべての戦略の前提として反映されるべきものでもあります。そうすれば、営業計画のあらゆる面が最初から整えられ、すべての決定事項はデータに基づいたものになります。
営業部門の責任者にとって、継続的に記録・追跡されたデータは、「どの活動が売上重視であり目標達成に役立っていて、より多くの時間を費やす価値があるか」を知るのに役立つ武器になります。
7. 営業のランプタイム(担当者が一人前になるまでの期間)把握
離職率を考慮して効果的な計画を立てるためには、営業担当者のランプタイムを明確に把握することが重要です。会社の目標を達成するために適切なペースで採用を行うためには、リーダーが営業担当者が一人前になるまでの期間を正確に把握しておくことが不可欠なのです。
ランプタイムを適切に設定する際は、人員のバランスを意識しましょう。ランプタイムの期間が長すぎると、トップレベルの担当者の突然の離職により、新しい担当者がそのポジションでしっかりと対応できない、ということが起こり得ます。一方、立ち上げ期間が短すぎると、営業リソースが余っているように見えたり、営業担当者が成績を収めるために必要なトレーニングを受けられなかったりする可能性があります。
8. 担当者の離職率の把握
先に述べたように、適切な時期に適切な人数の営業担当者を雇用して、営業キャパシティを維持することは重要です。しかし、営業リーダーが担当者の離職を予測し、事前に対策を講じることが出来れば、より望ましい状況と言えるのではないでしょうか。ここで役立つのが、 Xactly Insightsの人工知能(AI)アルゴリズムです。
Xactly社のリーダー達がXactly Insightsを利用し、自社営業チームの担当者に離職率アルゴリズムを適用してみたところ、一部の社員が離職リスクを抱えていることが分かりました(詳細はこちら)。
9. 営業テリトリーの再編成
担当者ごとの営業テリトリーの設定が不十分だと、営業成績が平均よりも最大で30%も低くなります。そのため、データに基づくテリトリーマッピングが行われていない場合、各エリアで担当者が営業クォータ(目標)を達成する機会が均等に与えられていることを保証できなくなります。これでは士気が下がってパフォーマンスが低下し、売上を増やすのに理想的な環境であるとは言えません。
データに基づいて作成された営業テリトリーは各担当者に均等な機会を与え、組織が各エリアをカバーするために必要な、適切な量のリソースを確保することにもつながります。自動化されたテリトリーマッピングでは、さらに一歩進んでサードパーティのデータを取り込み、過去に見落とした可能性のある、まだ開拓していないエリアから売上を獲得する可能性も高めます。
10. 報酬アップの検討
販売量を増やすために重要なのは、インセンティブ報酬です。インセンティブは営業活動を促進するものであるため、営業担当者が十分なパフォーマンスを発揮できるような、モチベーションを与えるものでなければなりません。
そのため、営業担当者の役割に応じた、適切な報酬体系を作ることが重要です。この報酬体系は、担当者が商談を成立させることを奨励するために、競争的で且つモチベーションを高めるものでなければなりません。パフォーマンスに応じたインセンティブを与えることで、成績と報酬とがリンクすることになります。これは、企業が営業チームの目標達成に向けてモチベーションを高めるために利用できる最良の方法の1つです。
11. 営業担当者の在職期間は忘れずに
Xactly Insightsのデータによると、各担当者の営業クォータ達成率とパフォーマンスは、営業職に就いてから3年目にピークを迎える傾向があります。また、組織全体の経験値がどの程度なのかを把握することで、パフォーマンスについての予測を改善し、売上最大化を狙うことができます。
担当者の在職期間が長くなると、役割の変更やキャリアアップを検討することが必要になります。Xactly Insightsのデータは、職務に就いてから5年が経過するとパフォーマンスが下降傾向になることも示しています。この時期に入ったらキャリア目標を再検討し、高いレベルのパフォーマンスを維持するために担当者を新しいポジションに移すことを検討する良い機会です。
12. 営業部門の多様化
職場にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みを導入することで得られるメリットは、包括的かつ広範囲に及びます。D&Iを実施している企業は、優秀な人材の確保からより高いエンゲージメントと業績の向上まで、従業員の満足度と業績の両面で、何度も成功を収めています。
実際、マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、人種や民族の多様性において上位25%に入る企業は、財務的なリターンが業界平均値を上回る可能性が35%高いそうです。これは、営業部門についても同じことが言えます。
「The Xactly 2019 State of Gender Equality in Sales Report」では、性別の多様性が営業成績をも向上させることが示されています。女性の営業担当者は、平均して高い営業クォータ達成率を実現しています。それだけでなくガートナー社の報告によると、営業部門に45%以上の女性がいる企業の62%が、平均よりも高い利益率を上げているといいます。
13. フィードバックは公正に
営業担当者にフィードバックを与えることは容易ではありませんが、営業成績の評価は営業リーダーの業務の一環です。リーダーは常に透明性を保つべきであり、担当者がパフォーマンスの改善を求められている場合は特に気をつける必要があります。
また、リーダーはミーティングにおいて、良いことも悪いことも含めて、目の前の状況に効果的に対処するポジティブなフィードバックを提供することを目指すべきです。何を伝えれば良いか困った時は、以下のポイントを基準にして、フィードバックに役立てましょう。
- 問題が発生した際、すぐに対処できるようタイムリーに伝えているか
- 目の前の課題を明確に認識できているか
- 客観的であり、外部圧力や個人的な影響を受けていないか
- 建設的であり、具体的なアクションアイテムを提示できているか
14. 適切なトレーニングで営業担当者を指導
優れたパフォーマンスを発揮するためには、適切なトレーニングを受ける必要があります。適切な知識、スキル、そしてリソースがなければ、営業担当者は組織の成長につながるような目標を達成できません。実践的なトレーニングは、キャリアを通じて継続的に行っていく必要があります。
セールスイネーブルメントやトレーニング担当チームは、営業組織を成功に導くため、トレーニングを改善し続ける必要があります。その際、以下の3つの方法を実践してみてください。
- タイミングよくリフレッシュの時間やキャリアアップ機会を提供し、組織的な教育を継続させる
- 現代の学習スタイルに合わせ、トレーニングをデジタル化したり、小分けにしたりする
- キーになる内容を頻繁に繰り返すことで、重要な情報を確実に覚えられるようにする
15. 社員のモチベーションを高めるためにSPIFを検討
営業部門の責任者は、SPIF(特別な販促インセンティブ)を追加することで、営業担当者のパフォーマンス向上に火をつけることができます。ただし、このテクニックは継続的に使用しない方が効果的です。SPIFは、短期間でパフォーマンスを向上させるために必要な「エネルギッシュで競争的な環境」を作り出すのに適しています。
16. お客様の支持を集める
バイヤージャーニーの最終ステップは、第三者からの支持を見つけることです。そのため、自社の製品やソリューションを支持し、その効果を広めてくれるようなお客様は、とても貴重な存在です。
お客様のロイヤリティーと支持を得るための最良の方法は、お客様中心の環境を作ること。そして、営業担当者が最初からそれを意識して実現することです。これにより、お客様は自身の知識や専門性を共有し、同業他社とのつながりを構築することもできます。
17. 企業文化とモラルの向上
実は、企業文化やモラルは、営業の成績にかなりの影響を与えます。社風がネガティブでモラルが低いと、パフォーマンスが低下します。リーダーシップを発揮して、トップダウンでポジティブな職場環境を作り上げることが重要です。すべての従業員が意欲的に働き、自分の仕事を信じ、会社の目標を一緒に達成できるようなオフィスにすることを目標にしましょう。
18. 直感バイアスをなくす
データやテクノロジーの進歩により、今日のビジネスの世界では「直感」が通用しにくくなっています。今の時代に成功を収めるためには、事実・データに基づき、判断することが大切です。
しかし、自覚しているものを変えることと、自覚していないものを変えることの間には大きな違いがあります。現に「Xactly’s 2021 State of Global Enterprise Sales Performance survey」によると、約4分の1(24%)の企業が、計画立案の際に未だに直感に頼っていることが分かりました。
直感バイアスは過去の経験に基づいたものであり、どんなに専門知識があったとしても、その経験には限界があります。だからこそ、予期せぬ混乱に見舞われたときに必要なデータやテクノロジーにアクセスし、すべてをカバーできるようにしておく必要があるのです。
19. 人材の潜在能力を引き出す
セールス領域がより競争の激しいデジタルな世界へと進化していく中で、企業が認識すべきことがあります。それは、企業の中心は「プロセス」ではなく、あくまで「人」であるということです。そうあるためには、人材のモチベーションを高め、潜在能力を引き出すための手段を提供しなければなりません。
営業部門にデジタルトランスフォーメーションを導入することは、売上を増やし、パフォーマンスを向上させ、営業組織を強化するために効果的な方法です。詳しくは、インフォグラフィック「An Illustrated Look into The State of Global Enterprise Sales Performance in 2021」をご覧ください。
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